◆住宅カンペブログ◆

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◆断熱と健康リスク ~冬でも室温は18℃以上に~



 

今回のテーマは「断熱と健康」です。

 

 

こんにちは。ぽへです

今回は個人的に気になっていた、「断熱と健康の関連性」について記事にしていきます!

 

断熱と健康...?快適さへの投資だけなんじゃないですか?

私も半信半疑でしたが、そういうわけでもなさそう...?

 

 

今回の記事では、「住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第6回報告会(2022.2.18)」を参考に、住宅の温熱環境と健康リスクについて見ていきたいと思います!よければ参考までにご覧ください。

一般社団法人 日本サステナブル建築協会(JSBC

 

 

さて、今回のクイズはこちら!

Q. 省エネ区分のうち、冬季に室温が外気温の影響を受けやすい地域はどこ?

 

この記事を読めばきっと答えられると思いますので、ぜひ探してみてください!

 

 

 

 

快適で健康なら最高なのでは...?

 

 

 

 

 

室温と健康ってどんな関係があるの?

断熱と健康の関連の前に、「室温」と「健康」に関してみていきます。

 

住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査

まずはこちらのスライド。

引用:住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第6回報告会

 

よく言われている「高血圧」のほかに、睡眠障害「夜間頻尿」があげられていますね。

高血圧はヒートショックなどとの兼ね合いでもよく取り上げられていますが、睡眠障害や夜間頻尿などは初めて聞きました💦

(たしかに寒いと寝つき悪い、というのは言われればなるほど、とはなりますが。)

 

 

WHO housing and health guidelines

先ほどのスライドでも引用されていた、WHOが出しているガイドラインWHO housing and health guidelines)も参照してみます。

WHO Housing and health guidelines

第4章「Low indoor temperatures and insulation(低室温と断熱)」では、以下のように述べられています。

 

Cold indoor temperatures are often a consequence of outdoor temperature, structural deficiencies, including a lack of insulation and airtightness, and lack of heating. As outlined in this chapter, cold indoor temperatures have been associated with increased blood pressure, asthma symptoms and poor mental health.

低室温はおよそ以下3つの要因(①外気温、②断熱・気密性の欠陥、③暖房不足)から構成される。また寒い室内温度は血圧の上昇、喘息症状、精神衛生状態の悪化と関連している。

Cold homes contribute to excess winter mortality and morbidity.

寒い住宅は、冬の過剰な死亡率や罹患率の原因となっている。

 

(中略)

 

Winter mortality is greater in countries with milder climates than in those with more severe winter conditions , in part because countries with mild winters often have homes characterized by poor domestic thermal efficiency that are harder to heat than well insulated houses in more extreme climates. 

冬の死亡率は、冬の気候が穏やかな国の方が厳しい国よりも高いが、これは冬が穏やかな国では、家庭内の熱効率が悪く、断熱性の高い住宅よりも暖房しにくい住宅が多いためである。

 

「血圧」「喘息」「精神衛生(うつ症状)」などとの関連が報告されているようです。

さらに具体的な疾病外に加えて、低室温は風邪などへの罹患率や死亡率などを引き上げる要因にもなっている、とも述べられています、

 

 

また冬季の寒冷暴露のリスクを取り上げたうえで、

WHOは「最低室温を18度以上に保つ」ことを推奨しています。

Recommendations of the WHO Housing and health guidelines

健康リスクを軽減するために、特に冬季の室温管理が重要であることは知っておいてほしいですね。

 

ただしこの「18℃」というのは注意が必要です。(同ガイドラインより)

  • 室内温度の低さと健康への悪影響には関連があり、住宅の断熱改修と健康状態の改善には関連がある

  • 寒い家を暖かくすることが健康に大きな利益をもたらすことは確実であるが、健康への悪影響が発生しやすい正確な温度を確定するには不十分である。

  • 高齢者や子供、慢性疾患患者などに対しては、18℃より高い室内温度が必要な場合がある。

  • 寒い家を暖めると心血管系疾患のリスクが低下するというエビデンスの確実性は、中程度である。

  • 断熱材の設置が断熱材の設置が健康増進につながるという証拠の確実性は高いが、これは断熱材の種類によって異なる。(そのため上記推奨ポイントにおいても、新築およびリフォーム時の適切な断熱施工は ”場合による” となっている)

 

 

日本の住宅はどんな感じなの?

WHOが推奨している室温18℃に対して、日本の住宅はどんな感じなのでしょうか。

引用:住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第6回報告会

 

あくまで当該研究機関が提唱している「スマートウェルネス住宅」を対象にした調査ではありますが、

  • 平均室温(居間)はだいたい16~17℃
  • 平均最低気温(居間)は断熱改修しても13℃程度
  • 断熱改修を実施した住宅では、「居室の最低気温の改善」が見られている
  • 断熱改修しても平均気温は大きく変わらず

適切に断熱できれば、気温が下がりにくいんですね。平均気温については、断熱改修後でも大きな変化がなかったのは驚きでした。

 

しかしWHOが提唱する「最低室温18℃」にはまだまだ遠そうですね...💦

 

 

 

また室温がどれくらい外気温の影響を受けているのか、という研究も報告されており、省エネ区分の6地域が一番外気温の影響を受けやすい、ことがわかっています。

引用:住宅の断熱化と居住者の健康への影響に関する全国調査 第6回報告会

スライドにもありますが、これは「温暖な地域ほど断熱性能が低い」ために、外気の影響を受けやすいと考えられます。

 

 

冬季の外気温を見てみればわかりやすいのですが、ここまで温度差があるにもかかわらず、室内の温度は大きく変わらなかったことが報告されています。

引用:冬季における住宅内室温と外気温の実態とその関連:SWH横断調査

2地域と6地域では、平均室温ではおよそ 9℃ほど 差があるにもかかわらず、6地域のほうが外気温の影響を受けやすく、寒くなりやすいことが報告されていました。

 

これらのデータからわかるとおり、日本の住宅の断熱性能は、冬季の健康リスクから住居者を守れるレベルまでは、まだまだ不十分だということがわかります💦

 

 

 

断熱と健康の関連は?

それでは、「室温」と「健康」の関連性や日本の現状もわかったところで、本題に入ります。

 

 

断熱と健康の関連性については、

「冬季の低室温が健康リスクを高めるのであれば、断熱することでその健康リスクを下げられるのでは?」という仮説に基づいています。

 

「断熱」と「健康」の関連性は、2000年以降、いろいろな国で実施されています。

今回紹介するのは、2007年にニュージーランドで行われた試験ですね。(WHOのガイドラインにも引用されています)

以下の条件に該当する1,350世帯を対象とした。

  • 非断熱住宅である
  • 少なくとも1人の世帯員が過去1年間に呼吸器症状の既往がある
  • 今後2年間のうちに引っ越す予定がない

また断熱処理(insulation)としては、以下の通りに行った。

  • 天井の断熱施工
  • 窓やドア周りの隙間風防止処理
  • 床根太の下に断熱施工(サイザル麻?)
  • 家の下の地面にポリエチレン製の防湿壁を設置。

 ※断熱材は政府仕様(抵抗値2.4)のものを使用。

 

 

結果としては、断熱改修によって室温が有意に上昇。

Effect of insulating existing houses on health inequality: cluster randomised study in the communityより改変

 

 

また寒い家で感じる不快感(結露やカビ、寒さなど)や、体調不良(風邪、咳、睡眠障害など)の頻度なども有意に減少することが報告されています。

Effect of insulating existing houses on health inequality: cluster randomised study in the communityより改変

 

 

ただこの結果で注目してほしいのは、断熱改修しても室温が14℃くらいしかないこと。

⇒これくらいの室温では私が思う快適には程遠いですね💦

Effect of insulating existing houses on health inequality: cluster randomised study in the communityより改変

 

この報告からは、「無断熱」⇒「必要最低限の断熱」であれば、健康的なメリットも十分感じられることがわかります。

一方で、例えば「省エネ基準」⇒「HEAT20 G2」にした時も同じようなメリットがあるかといわれると、そこは断言はできないかと。

 

ただし省エネ基準の住宅でも最低室温18℃以上をキープするのは難しい、もしくは暖房費が大きくなってしまう可能性があるので、今後は最低でもZEH、予算の範囲でHEAT20 G2を目安に断熱化していくのが望ましいかと思います。

 

 

自宅の温熱

ちなみに我が家はどうか?という話。

 

5地域 HEAT20 G2(Ua=0.39, C=0.2)でエアコン暖房のみですが、室内すべて21℃以上をキープできています。

 

さらに、2023年1月下旬の大寒波の日でも室温は20℃前後をキープ。

室内の温湿度推移(1/24~1/27)

24日深夜~25日早朝までは、エアコンがずっと霜取り運転しており、アンリ暖房できていませんでしたがそれでも19℃以上はキープできていました。

 

詳細はこちらの記事をご覧ください。

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pohe-homecampe.hateblo.jp

 

 

健康になったかどうかはわかりませんが、少なくともめちゃめちゃ快適です。

個人差はあるかと思いますが、これくらいの室温は維持できるような性能の住宅を目指したいですよね。

 

 

 

所感

室温と健康リスクの関連性について簡単に見てみましたが、やはりエビデンスとして蓄積は少なく、高血圧の対策として「住宅の高断熱化」を推奨できるほどのエビデンスはないようです。(それよりも減塩などが推奨されます)

 

なので、「高血圧だから高断熱な家を建てるべき!」とはならないです。

自分や家族にそういった悩みがあり、生活環境を変えることで改善またはリスク手減をしたい、というのであればぜひぜひ、という話になりますが、健康リスクを少なくするために家を建てる、という前提だと体感しにくいといいますか、建てた後の満足度は少し疑問が残るかもしれませんね。

 

 

断熱する一番の目的は「快適さ」です。

コスト回収も健康メリットも言われますが、それはあくまで副次的なものであって、やっぱり住まい手が快適に過ごせる空間を作る一番の方法が断熱気密であり、その快適さに投資しているのだと、私は思います。

 

今後は、施主個人が勉強して高断熱な住宅に住まうのではなく、国や業界が主導して高断熱住宅が増えていくことを願います。そうなれば、おのずと国民全体の健康なども変わってくるのではないでしょうか。

 

余談ですが、WHOは住宅の温熱環境改善において政府が打つべき手段として以下のように取り上げています。

  • 建築基準を改善する
  • ソーラーパネルの設置の義務化
  • 住宅の断熱と効率的な暖房の義務化
  • 断熱材や効率的な暖房器具など温熱環境改善につながる補助金や税制優遇措置の実施
  • 従来のエネルギーコストの補助、および代替エネルギーへの奨励措置
  • 住宅が老朽化し、改修が不可能な場合代替住宅の建設

 

これを見ていると、日本の住宅の温熱環境が世界で低水準なのもわかるような気がします...。

 

 

まとめ

それでは今回の記事をまとめます!

☆POINT☆
  • 冬季も室温は18℃以上を目指そう!(WHO推奨)
  • 低室温だと、「高血圧」や「睡眠障害」、さらには「精神疾患」につながるともいわれているよ!
  • 日本の住宅の断熱はまだ不十分。平均気温は16-17℃しかないし、部屋間の温度差も!
  • 断熱⇒室温改善⇒健康メリットは考えられるけど、まだまだ研究が必要な領域。
  • 断熱の一番のメリットは「快適さ」!予算内でしっかり断熱することをオススメします。

以上です。

 

今回紹介できなかった研究(夜間頻尿や睡眠障害)についても、ぼちぼち記事にまとめていこうかと思います。

 

 

ちなみにクイズの答えは…!

A. 6地域!温暖地域は断熱性能が高くないからだよ💦

でした~!

 

 

 

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最後までご覧いただき、ありがとうございました。

 

 

皆さんが素敵なおうちを建てられますように...